「貧困とはたんに生活の物質的な水準の問題ではない。それはそれぞれの具体的な社会の中で、人びとの誇りを挫き未来を解体し、『考える精神』を奪い、生活のスタイルのすみずみを『貧乏くさく』刻印し、人と人との関係を解体し去り、感情を枯渇せしめて、人の存在そのものを一つの欠如として指定する、そのようなある情況の総体である」(p.52)
見田宗介『まなざしの地獄』(河出書房新社、2008年)
知り合いの先生から薦められて、読んでみましたが、
非常にインパクトのある一冊でした。
60年代末の連続射殺事件を手がかりに
都市の他者たちからそそがれるまなざしの地獄から逃走しようとする
当時の青少年たちの切実なる欲望を読み取っています。
60年代のN・Nにとっては、まなざしが地獄でしたが、
00年代の秋葉原事件のKにとっては、まなざしの不在が地獄でした。
にも関わらず、「階級の実存構造」ともいえる
貧困を生きる人間にとっての主観的意味を
繊細に明らかにするその分析視角は、現代の貧困をとらえる上で
大きな手がかりとなるでしょう。
未読の方は、是非手にとってみてください。
(ryoga)
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