月日が経つのは早いもので、前回の更新から早くも1週間が過ぎてしまいました。
新しく関係ありそうな本を読もうと思っていたのですが、
途中で見事に挫折しましたので、随分前に読み終えた、
雨宮処凛・萱野稔人『「生きづらさ」について』(光文社新書、2008年)を紹介します。
この本は、経済的問題と直接結びつかない、
「純粋な生きづらさ」を正面から扱っています。
それも俗流若者論のように「人間関係の希薄化」を指摘するのではありません。
そもそも現代社会においては
「コミュニケーションのハードルが非常に高くなっている」
という事実に注目しているのです。
現代社会では、至る所で場の空気を読む力が高度に要求され、
それに一度失敗すると、まわりから認めてもらえず、自分の居場所もつくれません。
学校や家族、地域社会などの、共同体的社会関係が自明であった時代に比べ、
他者とのコミュニケーションの中で、
そのつど自分の能力や価値を認めてもらわないといけないという圧力が
はるかに強くなっています。
この社会関係の変化を見ずに、個人の精神的「弱さ」を叱咤するのは、
問題の本質から決定的にずれているのです。
コミュニケーション能力の「欠如」により、他者と同調できない人間は、
深刻なアイデンティティ・クライシスとなります。
さらに労働市場の流動化が激しくなると、その影響は決定的です。
90年代の若者は、ナショナリズムを受容することで
「想像の共同体」を生きることができました。
自分の存在価値を見出せない若者たちが、
観念的にでも社会と回路をつなぐことができるだけ、
自己責任論にはまっていた頃より、よほど救われたと雨宮さんは語っています。
リストカットや自殺未遂を繰り返す、
本当に生きづらい若者は「右傾化」さえできていないのです。
形式的なナショナリズム批判が、いかに空虚であるかが分かります。
この問題の難しさは、無条件に互いの存在を認めることができる居場所を、
自覚的につくりだすことの困難性にあります。
団塊の世代にとってはその存在は自明なことだし、
現代の若者もコミュニケーション格差を超えた連帯が極めて困難です。
経済的格差とともに、コミュニケーション格差を正面から問題とすることが、
社会的連帯の輪を広げる上で、いま本当に必要なことだと思います。
そういう視点から、現代の『蟹工船』ブームを考えてみることも、
大切なことのように思います。
(ryoga)
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新しく関係ありそうな本を読もうと思っていたのですが、
途中で見事に挫折しましたので、随分前に読み終えた、
雨宮処凛・萱野稔人『「生きづらさ」について』(光文社新書、2008年)を紹介します。
この本は、経済的問題と直接結びつかない、
「純粋な生きづらさ」を正面から扱っています。
それも俗流若者論のように「人間関係の希薄化」を指摘するのではありません。
そもそも現代社会においては
「コミュニケーションのハードルが非常に高くなっている」
という事実に注目しているのです。
現代社会では、至る所で場の空気を読む力が高度に要求され、
それに一度失敗すると、まわりから認めてもらえず、自分の居場所もつくれません。
学校や家族、地域社会などの、共同体的社会関係が自明であった時代に比べ、
他者とのコミュニケーションの中で、
そのつど自分の能力や価値を認めてもらわないといけないという圧力が
はるかに強くなっています。
この社会関係の変化を見ずに、個人の精神的「弱さ」を叱咤するのは、
問題の本質から決定的にずれているのです。
コミュニケーション能力の「欠如」により、他者と同調できない人間は、
深刻なアイデンティティ・クライシスとなります。
さらに労働市場の流動化が激しくなると、その影響は決定的です。
90年代の若者は、ナショナリズムを受容することで
「想像の共同体」を生きることができました。
自分の存在価値を見出せない若者たちが、
観念的にでも社会と回路をつなぐことができるだけ、
自己責任論にはまっていた頃より、よほど救われたと雨宮さんは語っています。
リストカットや自殺未遂を繰り返す、
本当に生きづらい若者は「右傾化」さえできていないのです。
形式的なナショナリズム批判が、いかに空虚であるかが分かります。
この問題の難しさは、無条件に互いの存在を認めることができる居場所を、
自覚的につくりだすことの困難性にあります。
団塊の世代にとってはその存在は自明なことだし、
現代の若者もコミュニケーション格差を超えた連帯が極めて困難です。
経済的格差とともに、コミュニケーション格差を正面から問題とすることが、
社会的連帯の輪を広げる上で、いま本当に必要なことだと思います。
そういう視点から、現代の『蟹工船』ブームを考えてみることも、
大切なことのように思います。
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